ここ数年、暗号資産(仮想通貨)だけでなく、「Web3(ウェブスリー)」という言葉を耳にする機会が一気に増えました。
「なんとなく新しいインターネットっぽい」「ブロックチェーンと関係ありそう」くらいのイメージはあっても、なぜここまで世界的にWeb3が注目されているのかまでは、よく分からないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「なぜWeb3が注目されているのか」というテーマを軸に、2025年時点の世界の最新動向も踏まえながら、初心者にも分かりやすく整理していきます。
- Web3とはそもそも何なのか
- なぜ世界中の企業・投資家・政府が注目しているのか
- 2025年現在、どんな分野で実際に動きが出ているのか
- これからWeb3に触れてみたい人は、どう向き合えばいいのか
といったポイントを順番に解説しますので、「Web3の全体像をつかみたい」という方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
Web3とは?まずはざっくり全体像を整理
Web1・Web2・Web3の違い
Web3を理解するために、まずはよく言われる「Web1 → Web2 → Web3」の流れを簡単に整理しておきましょう。
- Web1.0:静的なホームページの時代。情報は一方向で「読むだけ」が中心。
- Web2.0:SNSやブログ、YouTubeなどの登場で、ユーザーもコンテンツを投稿できる双方向の時代。
- Web3:ブロックチェーンを使って、データや価値・権利の管理を分散化し、「所有権」や「参加権」がユーザー側に戻ってくることを目指す新しいインターネット像。
Web2までは、大手プラットフォーム(GAFAなど)にデータやお金の流れが集中していました。
一方Web3では、ブロックチェーンやスマートコントラクトを使って、「特定の企業だけがすべてを握る構造」をゆるめようとしているのが大きな特徴です。
キーワードは「分散型」と「ユーザー主権」
Web3を一言でまとめると、次のようなイメージです。
「データや価値の管理を分散させ、ユーザー自身がコントロールできる新しいインターネット」
具体的には、
- ウォレットで自分の資産やアイデンティティを管理する
- トークンやNFTで「所有権」や「参加権」を持つ
- DAO(分散型自律組織)でプロジェクトの方針を投票で決める
といった形で、「プラットフォームのユーザー」から「ネットワークの一員」へと立場が変わっていく世界観です。
なぜWeb3はここまで注目されているのか?4つの理由
理由1:巨大市場としての成長ポテンシャル
Web3・ブロックチェーン関連の市場規模は、まだ始まったばかりですが、2024年時点で約30億ドル規模とされ、今後10年で約1000億ドル規模まで成長するという予測も出ています。
また、暗号資産全体の採用状況を示す指標として有名なChainalysisの「Crypto Adoption Index」では、2024〜2025年にかけて、特に新興国やアジア圏を中心に暗号資産・Web3の利用が拡大していることが示されています。
単なる一時的なブームではなく、「新しいデジタル経済圏」として成長期待が高まっていることが、Web3に注目が集まる大きな理由のひとつです。
理由2:トークン・NFT・RWAによる「新しい価値の作り方」
Web3では、ブロックチェーン上で発行されるトークンやNFT(非代替性トークン)を使って、これまで難しかった「価値のデジタル化・細分化・グローバル流通」ができるようになりつつあります。
特に2024〜2025年にかけて注目度が急上昇しているのが、RWA(Real World Assets:現実資産のトークン化)です。
不動産・社債・国債・コモディティなどの現実世界の資産をトークン化し、ブロックチェーン上で24時間取引できるようにする動きが、世界的に加速しています。
さらに、NFTはアートやゲームだけでなく、ブランドの会員権・チケット・ロイヤルティプログラムなどにも応用され、ファッション・エンタメ業界での取り組みも増えています。
こうした「新しい価値の設計方法」が登場したことで、Web3は投資家だけでなく、クリエイター・企業・金融機関からも注目される存在になっています。
理由3:インフラ技術の進化で「使える段階」に近づいている
以前のWeb3は、「ガス代(手数料)が高い」「トランザクションが遅い」「UXが難しすぎる」といった問題が多く、一般ユーザーにとってはハードルが高いものでした。
しかし、2024年〜2025年にかけて、
- Ethereumのアップグレード(Dencunなど)によるレイヤー2手数料の大幅な低下
- Optimism・Arbitrum・Base・Immutableなど、用途特化型L2の拡大
- ウォレットUXの改善・アカウントアブストラクション(AA)対応ウォレットの増加
といった技術面の進化が進み、「実際に使えるWeb3アプリケーション」が増えてきたことも、大きな転換点になっています。
理由4:政府・大企業が本格参入し始めた
Web3は「個人投資家やスタートアップだけの世界」ではなくなりつつあります。
日本では、自民党のプロジェクトチームによる「Web3ホワイトペーパー」が2023年・2024年版と連続して公表され、税制・会計・規制の整備を進め、Web3を成長戦略の一つとして位置づける方針が明確に示されました。
また、アジアでは香港がトークン化資産・ステーブルコイン・e-HKD(デジタル香港ドル)に関する枠組みづくりを進めるなど、Web3を金融インフラに組み込もうとする動きも出ています。
欧米でも、Web3・暗号資産に関する規制が整備され始め、「ルールが見えてきたことで、機関投資家や大企業が参入しやすくなった」という変化が起きています。
世界のWeb3最新動向1:市場・ユーザーの広がり
Stablecoin・RWAがWeb3の実需を押し上げる
2024〜2025年のWeb3市場で特に存在感を増しているのが、ステーブルコインとRWAトークンです。
Chainalysisのデータによると、ステーブルコインUSDTは2024年〜2025年にかけて、月平均約7,000億ドル規模、ピーク時には月1兆ドル超の取引を処理しており、オンチェーン取引の大部分を占めるようになっています。
また、RWA市場も急速に拡大しており、2024年初頭に約86億ドルだったRWA残高が、2025年には200億ドル超に増加したというレポートもあります。
これは、「投機ではなく、実際の金融取引・資産運用にWeb3が使われ始めている」ことを示す重要なシグナルです。
若い世代を中心に、ウォレット利用が拡大
ウォレットや暗号資産の利用率をみると、特にZ世代・ミレニアル世代での利用が高い傾向が報告されています。
今後、この世代が社会・経済の中心になっていくことを考えると、Web3的な価値観(所有権・参加型コミュニティ・分散型サービス)が当たり前になる可能性は、十分にありえます。
世界のWeb3最新動向2:インフラと技術トレンド
Layer2の普及で「安く・速く」が当たり前に
2024年3月、Ethereumで実装された「Dencunアップグレード(EIP-4844)」により、多くのLayer2(ロールアップ)の手数料が大幅に低下しました。
その結果、
- 数百〜数千円かかっていたトランザクションが数円〜数十円レベルに
- ゲーム・NFT・小口決済など、少額取引でもWeb3を使いやすくなった
- 用途特化型L2(ゲーム特化、DeFi特化、ソーシャル特化など)が続々登場
といった変化が起きています。
「手数料が高いから使いづらい」というWeb3の大きな弱点が、インフラ側の改善によって少しずつ解消されつつあるのは、大きな前進です。
UX改善・アカウントアブストラクションで「意識しないWeb3」へ
技術面では、アカウントアブストラクション(AA)と呼ばれる仕組みを取り入れたウォレットや、メールアドレスやSNSアカウントで簡単にウォレットを作成できるサービスも増えています。
これにより、
- シードフレーズを紙で保管しなくてもよい(リカバリ方法の多様化)
- 定期支払い・ガス代の代行支払いなど、Web2に近い操作性が実現
- 「ブロックチェーンを触っている感」をあまり出さずにアプリを提供できる
など、一般ユーザーでも違和感なく使えるWeb3アプリが登場しつつあります。
世界のWeb3最新動向3:RWA・ゲーム・ソーシャルなどのユースケース
RWAトークン化:現実世界の資産がオンチェーンへ
先ほど触れたRWAは、2025年のWeb3トレンドとして、さまざまなレポートで「最重要テーマ」のひとつとして挙げられています。
具体的には、
- 国債・社債・マネーマーケットファンドのトークン化
- 不動産・インフラ・コモディティのトークン化
- 銀行預金やトークン化預金(tokenized deposits)との連携
などが進んでおり、「利回りのある現実資産」と「DeFi」の世界がつながりつつあるのが現在地です。
Web3ゲーム・メタバース:所有権のあるゲーム体験へ
ゲーム分野では、2021〜2022年の「Play to Earn」ブームから一段落したものの、2024〜2025年はよりゲーム性を重視したWeb3ゲームが増えています。
最近のトレンドとしては、
- ゲーム内アイテムやスキンをNFT化し、二次流通市場で売買可能
- 特定ゲーム専用のLayer2を構築し、手数料ほぼゼロで高速プレイを実現
- Web2大手ゲームスタジオが、一部タイトルでWeb3要素を試験導入
など、「遊びやすさ」と「所有権」を両立させようとする動きが加速しています。
分散型ソーシャル・ブランドのロイヤルティプログラム
SNS分野では、分散型ソーシャル(DeSoc)と呼ばれる取り組みが進んでおり、ユーザーが自分の投稿・フォロワー・アイデンティティをウォレットで持ち運べる世界を目指すプロジェクトが登場しています。
また、ファッションやラグジュアリーブランドは、NFTやトークンを使ったロイヤルティプログラム・限定コミュニティ・イベント参加権などに取り組んでおり、「Web3 = クリプトだけ」ではないユースケースが増えています。
日本とアジアにおけるWeb3の位置づけ
日本:政府レベルで「Web3を成長戦略に」と明言
日本では、政府・与党が「Web3を成長戦略の柱のひとつに位置づける」と明言し、ホワイトペーパーや税制改正要望を通じて、スタートアップがWeb3ビジネスをしやすい環境づくりを進めています。
具体的には、
- トークン発行・保有に関する法人税・会計ルールの見直し
- Web3スタートアップへの資金調達手段としてのトークン活用の検討
- NFT・ゲーム・コンテンツ分野でのWeb3活用支援
などが挙げられます。
「日本は暗号資産に厳しい」というイメージもまだ残っていますが、少なくとも政策レベルでは「Web3を取り込みにいく」方向に舵が切られているのが現状です。
香港・シンガポールなどアジアの動き
アジアでは、香港・シンガポールなどが暗号資産・トークン化資産のハブ化を目指して、規制枠組みやライセンス制度を整備し、「健全なWeb3ビジネスならウェルカム」というスタンスを打ち出しています。
特に香港は、トークン化資産とe-HKD(デジタル香港ドル)、銀行預金のトークン化などを組み合わせた実証を行っており、「伝統金融 × Web3」領域で世界的に注目されています。
これからWeb3に触れてみたい人が押さえておきたいポイント
ポイント1:バズワードではなく「課題と解決策」を見る
Web3はバズワード的に語られることも多いですが、本質的には「どんな課題を、どのように解決しようとしているのか」が重要です。
ニュースを見るときは、
- そのプロジェクトは、誰のどんな課題を解決しようとしているのか
- Web3やブロックチェーンである必要は本当にあるのか
- ユーザーにとってのメリットは何か(早い・安い・便利・透明など)
といった視点でチェックしてみると、表面上の hype に振り回されずに済みます。
ポイント2:まずは「ウォレット」と「少額利用」から
実際にWeb3を体感するには、ウォレットを作って少額で触ってみるのが一番早い方法です。
・少額の暗号資産を入れてみる
・テストネットや低手数料なLayer2でNFTを1つミントしてみる
・ガス代やトランザクションの仕組みを自分の手で確認してみる
といった経験を通じて、「仕組みとしてのWeb3」が少しずつイメージしやすくなります。
ただし、大金をいきなり投じないこと・必ず余裕資金で行うことは徹底してください。
ポイント3:規制・税金・セキュリティの情報もセットで学ぶ
Web3は「自由さ」が魅力である一方、規制・税金・セキュリティの観点もしっかり理解しておく必要があります。
- 日本で暗号資産を売買したときの税金(雑所得として申告が必要なケースなど)
- 怪しいプロジェクトや詐欺的なトークンに注意すること
- シードフレーズや秘密鍵の管理ルール
など、「攻め」だけでなく「守り」の知識も同時に身につけていくことで、長く安全にWeb3と付き合っていくことができます。
まとめ:Web3は「インターネットの次の段階」になりうるか
本記事では、「なぜWeb3は注目されているのか?」というテーマで、
- Web3の基本的な考え方(分散型・ユーザー主権)
- 市場規模やRWA・NFTなど、価値のデジタル化という文脈
- Layer2・UX改善などのインフラ進化
- 政府・大企業・金融機関の参入や、アジア各国の動き
といったポイントを、2025年時点の最新動向とあわせて解説しました。
現時点で、Web3が「すべてのインターネットを置き換える」と言い切るのは時期尚早かもしれません。
しかし、「データや価値の扱い方を根本から見直す技術・思想」として、今後10年単位で社会に影響を与えていく可能性は十分にあります。
大切なのは、
- 短期的な価格変動やバブルだけを追いかけないこと
- 自分の生活や仕事の中で、どこにWeb3が関わりそうかをイメージしてみること
- 小さく安全に試しながら、「自分なりの距離感」を見つけること
です。
これからWeb3について学んでいきたい人にとって、この記事が
「全体像をつかむための地図」のような役割になればうれしいです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産・トークン・サービスへの投資や利用を推奨するものではありません。
実際の利用や投資を行う際は、最新の公式情報や法令を確認し、ご自身の判断と責任で行ってください。
