「ブロックチェーンって、ビットコインのための技術でしょ?」
そんなイメージを持っている人は、まだまだ多いかもしれません。
実は今、ブロックチェーン技術は、暗号資産だけでなく、国際送金・食品のトレーサビリティ・NFT・デジタル通貨・電子投票など、さまざまな分野で実用化が進んでいます。
この記事では、「ブロックチェーン技術はどこで使われているのか?」という疑問に答えるために、代表的な5つの実例を取り上げて、初心者にも分かりやすく解説していきます。
ブロックチェーンの基礎を知りたい方や、Web3や暗号資産ブログで情報発信したい方にも役立つ内容になっていますので、
ぜひ最後まで読んでみてください。
ブロックチェーン技術の基本をかんたんにおさらい
ブロックチェーンとは「改ざんしにくい取引台帳」のこと
ブロックチェーンとは、一言でいうと「取引データをブロックという単位でまとめて、鎖のようにつないだ分散型の台帳」です。
特徴としてよく挙げられるのは、次の3つです。
- 改ざんが難しい:データが多数のコンピュータに分散して保存され、過去の記録を書き換えるのが非常に困難
- 中央管理者がいなくても動く:ネットワーク全体で取引の正しさを検証する仕組みがある
- 履歴が追跡しやすい:いつ、誰から誰へ、どんな取引があったのかをチェーンとしてたどれる
この「改ざんしにくく、履歴が明確な台帳」という性質が、
お金だけでなく、あらゆる「記録」や「権利」の管理に応用され始めています。
どんな分野と相性がいいのか?
ブロックチェーン技術と相性が良いのは、たとえば次のような分野です。
- 多くのプレイヤーが関わる取引(国際送金・貿易・供給網など)
- 履歴や真正性が重要なデータ(食品の流通履歴・証明書・所有権など)
- 「誰が決めたか」を透明にしたい分野(投票・ガバナンス)
では、具体的にどのような形で使われているのか。ここからは5つの実例を見ていきましょう。
実例1:国際送金・銀行間決済(Rippleや銀行の事例)
従来の国際送金の問題点
海外送金をしたことがある人なら、「手数料が高い」「着金まで時間がかかる」と感じたことがあるかもしれません。
従来の国際送金は、
- 複数の銀行(中継銀行)を経由する
- 各銀行の営業時間やタイムゾーンの影響を受ける
- 事前に複数通貨で資金をプールしておく必要がある
といった事情から、コストも時間もかかる仕組みになっていました。
Rippleやブロックチェーン決済ネットワークの取り組み
そこで登場したのが、ブロックチェーンを活用した国際送金ネットワークです。
代表例のひとつとしてよく挙げられるのが、Ripple社のRippleNetです。
RippleNetは、参加する銀行や決済事業者同士がブロックチェーンベースのネットワークでつながり、国際送金をリアルタイムかつ低コストで決済することを目指しています。
日本では、SBIグループをはじめとした企業が、Ripple技術を活用した海外送金サービスを展開しており、東南アジアなどへの個人送金の高速化・低コスト化に活用されています。
また、スイスやイギリスなどでは、銀行間の決済インフラにブロックチェーンを使う実証・本番運用も進んでおり、24時間リアルタイムで最終決済まで完了するシステムの検証が行われています。
国際送金でブロックチェーンが役立つポイント
- 送金スピードの向上:数日かかっていた送金が、数秒〜数分レベルに短縮されるケースもある
- 手数料の削減:中継銀行を減らし、ネットワーク上で直接やり取りできるためコストを抑えられる可能性
- 透明性の向上:どこで滞留しているのか、状態が把握しやすくなる
こうした点から、ブロックチェーンは「国際送金のインフラをアップデートする技術」として注目されています。
実例2:食品サプライチェーンのトレーサビリティ(Walmart × IBM)
「この食品はどこから来たの?」を一瞬でたどる
食品の安全性において重要なのが、トレーサビリティ(追跡可能性)です。
「この野菜はどこの農場で作られたのか」「どのルートで店まで届いたのか」といった情報が、すぐに追えることが、食中毒対策やリコール対応に直結します。
世界的大手スーパーマーケットのWalmart(ウォルマート)は、IBMと協力して、食品サプライチェーンにブロックチェーン技術を導入しました。
ブロックチェーンで食品の履歴を管理
従来、食品の履歴をさかのぼるには、
- 農場
- 加工業者
- 物流会社
- 卸業者
- 小売店
といった多くのステップの記録を、紙やバラバラのシステムから集める必要があり、産地を特定するだけで数日〜1週間以上かかることもありました。
Walmartの取り組みでは、各ステップの情報をブロックチェーン上に記録することで、たとえば「店頭のマンゴーが、どの農場から来たのか」を、数秒で追跡できるようになったと報告されています。
サプライチェーンにおけるメリット
- 食中毒・異物混入時の対応スピード向上:問題のあるロットをすばやく特定できる
- 消費者への透明性向上:産地や流通過程をアプリなどで見せる取り組みも可能
- 偽装・不正防止:改ざんしにくい記録により、証明書や検査結果の信頼性が高まる
このように、ブロックチェーンは「モノがどう動いたか」を正確にたどりたい分野で力を発揮しています。
実例3:NFT・デジタルコンテンツ(NBA Top Shotなど)
NFTで「デジタルグッズの所有権」をブロックチェーンに記録
NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)は、「このデジタルデータは、この人が持っている」という所有権情報をブロックチェーンに記録できる仕組みです。
画像・動画・音楽・ゲームアイテムなど、コピーが簡単なデジタルデータに、「正規品としての証明書」を組み合わせるイメージです。
NBA Top Shotの例:ハイライト動画がコレクションに
代表的な事例のひとつが、バスケットボールのNBAの公式コレクションサービス「NBA Top Shot」です。
NBA Top Shotでは、
- 選手の試合中のハイライト動画を「Moment」としてNFT化
- 限定数のデジタルカードのように販売・二次流通
- ブロックチェーン上で、誰がどのMomentを持っているかを管理
といった形で、デジタル版トレーディングカードのような世界を実現しています。
最近では、NBA Top ShotのNFTが大手マーケットプレイスに対応するなど、
より多くのユーザーが売買・保有しやすい環境も整ってきています。
NFT活用が広がる分野
- デジタルアート:アーティストが作品をNFTとして販売し、二次流通時にもロイヤリティを受け取れる仕組み
- ゲーム:ゲーム内アイテムやキャラクターをNFT化し、プレイヤー同士で取引可能にする
- 音楽・チケット:ライブチケットや限定コンテンツのアクセス権としてNFTを使う実証も進行中
NFTの技術自体は、バブル的な価格高騰とは別に、「デジタルデータに唯一性や所有権をもたせる仕組み」として、今後もさまざまな分野で活用が検討されています。
実例4:中央銀行デジタル通貨(CBDC)とデジタルマネー
各国が進める「デジタル通貨」の実証
世界中の中央銀行が検討しているのが、CBDC(Central Bank Digital Currency:中央銀行デジタル通貨)です。
CBDCは、「中央銀行が発行するデジタル版の法定通貨」で、ブロックチェーンや類似の分散型台帳技術をベースにしたシステムで実証が進められています。
中でも注目されているのが、中国のデジタル人民元(e-CNY)です。
パイロット地域では、公共料金や小売決済、交通、観光などさまざまな場面で試験利用が進められ、取引額も年々増加しています。
なぜCBDCにブロックチェーンが使われるのか
CBDCのシステムすべてにパブリックなブロックチェーンが使われているわけではありませんが、多くのケースで、分散型台帳技術(DLT)が基盤として検討されています。
その理由としては、
- トランザクションの透明性:取引履歴を追跡しやすく、不正検知にも役立つ
- 24時間リアルタイム決済:銀行営業時間に依存しない決済インフラが構築しやすい
- プログラム可能なお金:スマートコントラクトと組み合わせることで、条件付き支払いなども実現可能
といった点が挙げられます。
民間のデジタルマネー・ステーブルコインにも応用
また、民間企業が発行するステーブルコイン(法定通貨に価値を連動させた暗号資産)でも、ブロックチェーンが基盤として活用されています。
最近では、大手決済企業やフィンテック企業が、国際送金やEC決済向けにステーブルコインを導入する動きもあり、「日常決済インフラとブロックチェーン」の距離が少しずつ縮まってきています。
実例5:電子投票・ガバナンス(自治体の実証実験など)
オンライン投票へのブロックチェーン活用
ブロックチェーンは、「誰が・いつ・どのように投票したか」を改ざんしにくい形で記録できるため、電子投票システムへの活用が世界各地で研究・実証されています。
日本でも、つくば市が住民参加型プロジェクトの投票に、ブロックチェーン技術を用いたオンライン投票システムを試験導入するなど、自治体レベルでの実証が行われた例があります。
なぜ投票にブロックチェーンが注目されるのか
選挙や投票は、「1人1票」「改ざんされていない」「集計が正確」であることが絶対条件です。
ブロックチェーンを使うことで、次のようなメリットが期待されています。
- 改ざん耐性:投票データの書き換えが難しく、不正を検出しやすい
- 透明性:投票プロセスや集計結果を検証しやすい
- コスト削減・利便性向上:オンライン投票が普及すれば、投票率向上にもつながる可能性
一方で、プライバシー保護・デジタルデバイド・サイバー攻撃対策など、解決すべき課題も多く、現時点では、主に小規模な住民投票や企業のガバナンス投票などでの実証が中心です。
DAO(分散型自律組織)でのガバナンスにも活用
ブロックチェーン上のコミュニティやプロジェクトでは、DAO(Decentralized Autonomous Organization)と呼ばれる形態で、トークン保有者が投票によって運営方針を決める仕組みも広がっています。
プロジェクトのアップデート方針や資金の使い道などを、ブロックチェーン上で投票・記録することで、「誰が、いつ、どんな決定に賛成・反対したか」を透明に残せるのが特徴です。
まとめ:ブロックチェーンは「お金の世界」だけの技術ではない
5つの実例から見えてくること
この記事では、ブロックチェーン技術の主な活用例として、次の5つを紹介しました。
- 国際送金・銀行間決済(Rippleなどの決済ネットワーク)
- 食品サプライチェーンのトレーサビリティ(Walmart × IBMの事例など)
- NFT・デジタルコンテンツ(NBA Top Shotなど)
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)やステーブルコイン
- 電子投票・ガバナンス(自治体の実証実験・DAOの投票など)
どの事例にも共通しているのは、ブロックチェーンが「記録の信頼性を高める」「複数のプレイヤーが関わるプロセスを効率化する」という役割を果たしている点です。
これから学ぶときのポイント
ブロックチェーン技術は、まだ発展途上の分野であり、実際に定着するもの・実験で終わるもの、両方が混ざり合っている段階です。
これから学んでいくうえでは、
- 「どんな課題を解決したいのか」という視点で事例を見る
- 技術そのものだけでなく、ビジネスモデルや規制の動きも意識する
- 暗号資産・Web3・NFTなど、自分の興味ある領域から少しずつ追っていく
といったポイントを押さえておくと、ニュースやプロジェクトの内容も理解しやすくなります。
ブロックチェーンは、「難しい技術」ではなく、「信頼をどのように作り、記録し、共有するか」を見直すための道具とも言えます。
今回の5つの実例を入り口に、興味のある分野から少しずつ知識を広げてみてください。
※本記事は、2025年時点で公開されている情報をもとにした一般的な解説であり、特定のサービスや投資を推奨するものではありません。
実際の利用や投資を検討する際は、必ず最新の公式情報を確認したうえで、ご自身の判断と責任で行ってください。
