暗号資産（仮想通貨）は、株式や投資信託と比べても価格変動（ボラティリティ）が非常に大きい資産です。
ニュースやSNSを見ていると、「ビットコインが一晩で20％急落」「アルトコインが半値になった」などの話題が、定期的に登場します。
そんな急落局面で、多くの人が共通して口にするのが、「怖くなって売ってしまった」「あのとき感情的にならなければ…」という後悔の言葉です。
この記事では、「暗号資産の急落時にやってはいけない3つの行動」をテーマに、価格が大きく下がったときに避けるべきNG行動と、その代わりにどのような考え方・行動を取ればよいのかを、初心者にも分かりやすく解説していきます。
- 暗号資産が急落するときによく起きていること
- やってはいけない3つの典型的な行動
- 急落時に冷静さを取り戻すためのチェックポイント
- 急落に備えるための「平時からの準備」
などを網羅的に取り上げますので、暗号資産投資を長く続けたい方・心を消耗せずに向き合いたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
暗号資産の急落は「特別な出来事」ではない
急騰・急落を繰り返しながら成長してきた市場
ビットコインをはじめとする暗号資産市場は、この十数年間で何度も大きな暴落と回復を経験してきました。
・世界的な規制強化のニュース
・大規模な取引所ハッキング
・マクロ経済（金融引き締めや金利上昇など）の影響
といった要因によって、短期間で大きく売られる局面は、過去にも何度も起こっています。
つまり、暗号資産に投資をする以上、価格の急落は「異常事態」ではなく、ある程度予想されるイベントとも言えます。
だからこそ、急落そのものを完全に避けることよりも、急落したときにどのように行動するかが、長期的な結果を大きく左右します。
人間の「感情」が損失を拡大させてしまう
急落時に難しいのは、チャートの問題ではなく「感情の問題」です。
・画面を開くたびに資産が減っているショック
・「これ以上下がったらどうしよう」という不安
・「もっと早く売っておけばよかった」という後悔
こうした感情が重なると、冷静さはどんどん失われ、合理的な判断ではなく、その場しのぎの「感情的な行動」を取りがちになります。
そこで次の章からは、急落局面で特にやってはいけない3つの行動を、一つずつ具体的に見ていきます。
やってはいけない行動1：パニックになって「理由も決めずに」投げ売りする
急落＝必ず「終わり」ではない
暗号資産の価格が急落したとき、多くの人は「もう終わりだ」「このままゼロになるかも」という不安に襲われます。
その結果、
- スマホでチャートを見て、我慢できずに成行注文で売却する
- 「とにかく今すぐ逃げないと」と冷静な判断ができなくなる
- 売った直後に反発して、さらに後悔の気持ちが増す
といった「パニック売り」が起こりやすくなります。
もちろん、損失を限定するための損切り自体は、とても大切なリスク管理の一つです。
しかし問題なのは、「なぜ今売るのか」「どこまで許容するのか」という基準がないまま、感情だけで売ってしまうことです。
売る・売らないの前に「自分のルール」を確認する
急落局面でいきなり注文ボタンに手を伸ばすのではなく、まずは次のようなポイントを自分に問いかけてみてください。
- この暗号資産を買った本来の目的は何だったのか（短期か長期か）
- どの価格まで下がったら「想定外」と判断すると決めていたか
- 今の急落は、ファンダメンタル（プロジェクトの中身）に重大な変化があって起きているのか
- それとも、市場全体のリスクオフなど「一時的な売り圧力」なのか
こうした問いに答えることで、「自分がルールに沿って売るのか」「ただ怖くて逃げたいだけなのか」を切り分けることができます。
損切りは「前もって決めておく」からこそ意味がある
急落の最中にルールを考え始めると、どうしても感情に引きずられます。
そのため、損切りラインはポジションを取ったときにあらかじめ決めておくのが理想です。
例として、
- 「価格が購入時から〇％下がったら、一部または全てを売却する」
- 「チャート上のサポートラインを明確に割り込んだら売る」
といったルールを自分なりに設定し、急落が来たときはそのルールに従うかどうかだけを考えるようにすると、感情の揺れをある程度コントロールしやすくなります。
やってはいけない行動2：ナンピン買いで「一発逆転」を狙う
ナンピンは「武器」にも「凶器」にもなる
暗号資産の急落時に多いのが、「今は安いから、買い増しして平均取得単価を下げよう」という行動です。
これ自体はドルコスト平均法や長期投資の一つの戦略として、うまく使えば有効な場面もあります。
しかし、問題は次のようなケースです。
- そもそも初めの投資額が、すでに自分のリスク許容度を超えている
- 急落している理由を理解しないまま「安いから」という理由だけで買い増す
- ナンピンのたびに投資額が膨らみ、下げ相場でどんどん資金が拘束される
このような「根拠のないナンピン」は、一時的に含み損を減らせたとしても、トレンドが変わらなければさらに大きな損失につながる可能性があります。
ナンピンが「逃げ」でなく「戦略」になっているか確認する
ナンピン買いを検討する前に、次のような点をチェックしてみてください。
- その暗号資産の長期的な成長ストーリーを、自分の言葉で説明できるか
- 急落の理由が、プロジェクト崩壊や致命的なスキャンダルではないか
- 資産全体に占めるその銘柄の割合は、リスク許容度の範囲内か
- ナンピンをしても、まだ生活や他の資産に余裕があるか
もしこれらに自信を持って「はい」と言えないなら、それは「戦略的なナンピン」ではなく「損から目をそらすための逃げ」になっているかもしれません。
「資金管理」ができていない状態でのナンピンは危険
ナンピン買いが特に危険なのは、資金管理のルールがないまま繰り返してしまうケースです。
・生活費や貯金に手をつける
・クレジットカードや借金で投資資金を増やす
・他の資産を売ってまで、下がる銘柄に固執する
こうした状態になってしまうと、
すでに「投資」ではなく「ギャンブル」になっている可能性が高いです。
暗号資産に限らず、投資で最も大切なのは「生き残ること」です。
どれだけ良い銘柄に出会っても、資金が尽きてしまえばそこですべてが終わります。
急落時のナンピンは、「これを逃したら一生取り返せない」という焦りから発動しやすい行動です。
だからこそ、一度深呼吸をして、自分の資金状況とリスク許容度を見直すことが大切です。
やってはいけない行動3：感情に任せて「投資方針そのもの」をコロコロ変える
急落のたびに「長期投資⇔短期売買」を行き来していないか
急落局面で意外と多いのが、自分の投資スタイルや方針を、そのときの相場に応じてコロコロ変えてしまうことです。
たとえば、
- 本来は長期保有のつもりで買ったのに、急落に耐えられずに短期売買に切り替えてしまう
- 急落からの反発を見て、「これからは短期トレードだ」と方針を変える
- しばらくしてまた下がると、「やっぱり長期投資で放置しよう」と戻す
このように、明確な軸がないまま投資方針を行き来すると、結果的に「高値で買って安値で売る」行動を繰り返してしまうことになります。
「自分はどんな投資家でいたいのか」を決めておく
暗号資産の投資スタイルは、大きく分けると、
- 数年単位のスパンで成長を期待する長期投資（ホールド）
- 数日〜数週間の値動きを狙うスイングトレード
- 1日の中の値動きを追うデイトレードやスキャルピング
などに分けることができます。
どれが良い・悪いというより、
自分の生活スタイルや性格、経験に合ったスタイルを選ぶことが大切です。
もし長期投資スタイルを選ぶのであれば、
- 日々の価格変動はあまり気にしない
- ニュースや開発状況など、プロジェクトの中身を重視する
- 数年単位での成長を期待し、短期の上下はある程度受け入れる
といったマインドセットが必要になります。
一方で短期売買を選ぶのであれば、
- チャート分析やテクニカル指標を学ぶ
- 取引ルールを明確にし、ロスカットも機械的に行う
- ポジションを持ちすぎない・持ち越しを減らすなどの管理
が求められます。
急落のたびに「軸」を失うと、勉強しても成果につながりにくい
どんなスタイルを選んだとしても、そのスタイルで経験を積み重ねることで、少しずつ判断力が磨かれていくものです。
しかし、急落のたびに
- 長期投資のはずなのに、感情的に損切りしてしまう
- 短期トレードのつもりが、含み損が怖くて「塩漬け」にしてしまう
といったことを繰り返していると、どのスタイルの「成功パターン」も身につかないまま時間だけが過ぎてしまいます。
暗号資産の急落時こそ、「自分は本来どんな投資方針を選んでいたのか」を思い出す時間にしてみてください。
急落時に冷静さを取り戻すためのチェックポイント
一度画面を閉じて、身体感覚を落ち着かせる
価格がどんどん下がっているとき、チャートを何度も更新してしまう気持ちはとてもよく分かります。
しかし、その状態で判断しても、感情が優先されやすくなってしまうのも事実です。
・一度スマホやPCから離れる
・深呼吸をする、散歩をする、あえて他の作業をする
・「今決めないといけない理由は本当にあるのか？」と自分に問いかける
こうした「一拍置く行動」を挟むだけでも、判断が変わることがあります。
「今の下落はどのニュース・要因と結びついているか」を整理する
急落の理由が全く分からないと、「このままゼロになるかもしれない」という不安が膨らみやすくなります。
そこで、
- 市場全体がリスクオフになっていないか（株式・他の資産も下げていないか）
- 特定の国や規制当局から、大きな発表が出ていないか
- 保有している銘柄固有の悪材料が出ていないか
といった視点で、情報を一度整理してみることをおすすめします。
ここで大切なのは、「だから絶対に大丈夫」「絶対に戻る」と信じ込むのではなく、事実ベースで状況を把握することです。
急落に備える「平時からの準備」が一番のリスク対策
そもそもの投資金額を見直す
急落時に冷静でいられない最大の理由は、そもそもの投資金額が自分の許容範囲を超えていることが多いからです。
・価格が少し下がるだけで眠れなくなる
・日常生活に支障が出るレベルでチャートが気になる
・「これを失ったら生活が立ち行かない」と感じる
こうした状態であれば、投資額そのものが大きすぎるサインかもしれません。
暗号資産は、「最悪ゼロになっても生活できる」余裕資金で行うのが大原則です。
急落の心配よりも、まず投資金額の調整を優先することも検討してみてください。
事前に「やらないことリスト」を決めておく
急落時に冷静でいるのが難しいなら、「やること」よりも「やらないこと」を先に決めておくのも有効です。
たとえば、
- 急落した日の夜は、新規ポジションを取らない
- 〇％以上の下落があっても、24時間は売買しない
- SNSの感情的な投稿を見てからすぐに行動しない
といった「急落時のマイルール」を決めておくと、感情に流されにくくなります。
まとめ：急落は避けられない。だからこそ「行動の質」を上げていこう
本記事では、「暗号資産の急落時にやってはいけない3つの行動」として、
- パニックになって理由も決めずに投げ売りする
- 根拠のないナンピン買いで「一発逆転」を狙う
- 感情に任せて投資方針そのものをコロコロ変える
という3つのNG行動と、その背景にある心理・対処法を解説しました。
暗号資産市場にいる以上、価格の急落を完全に避けることはできません。
しかし、急落のたびに感情的な行動を取るのか、それとも準備したルールに従って冷静に動くのかによって、数年後の結果は大きく変わってきます。
・投資額は余裕資金の範囲にとどめる
・損切り・利確のルールを事前に決めておく
・自分の投資スタイル（長期・短期）を明確にする
・急落時の「やらないことリスト」を用意しておく
こうした準備を少しずつ整えていくことで、
急落そのものは怖くても、「自分の行動」については後悔しにくくなります。
暗号資産投資は、短期間での勝ち負けだけがすべてではありません。
長くマーケットに居続け、自分なりの判断軸を磨いていくことが、結果的に資産形成にも、メンタルの安定にもつながっていきます。
この記事が、急落のたびに不安になってしまう方の「行動を整えるヒント」になれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産や投資手法を推奨するものではありません。
実際の投資判断は、ご自身の状況やリスク許容度を踏まえたうえで、ご自身の責任で行ってください。
