暗号資産(仮想通貨)で取引を続けていると、毎年の悩みになりやすいのが「損益計算」と「確定申告」です。
少しなら自分で計算できそうに見えても、取引所が複数あったり、レンディング・ステーキング・NFT・海外取引所などが混ざってくると、一気に難易度が上がります。
そこで役に立つのが、暗号資産の損益計算を自動化してくれる「無料ツール」です。
この記事では、無料で利用できる暗号資産の損益計算ツールを中心に、 それぞれの特徴や選び方のポイントを、初心者にもわかりやすく解説していきます。
「とりあえず無料で使えるものから試したい」「まずは自分の損益をざっくり把握したい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
暗号資産の損益計算がなぜこんなに大変なのか
理由① 取引所・銘柄が多く、データがバラバラになりやすい
ビットコイン(BTC)だけではなく、イーサリアム(ETH)、アルトコイン、ステーブルコインなど、 多くの銘柄を扱っている人も多いはずです。
さらに、国内取引所だけでなく海外取引所やウォレットも併用していると、 取引履歴があちこちに分散してしまい、Excelだけでまとめるのはかなりの労力になります。
理由② 取引の種類が増えるほど、計算ルールが複雑になる
現物売買だけならまだしも、次のような取引が混ざると、税務上の処理が一気に難しくなります。
- レバレッジ・先物・オプション取引
- ステーキング報酬・レンディング利息
- DeFi(DEX・流動性提供・レンディング)
- NFTの売買やゲーム内トークンのやり取り
日本の税制上は、暗号資産で別の暗号資産を買ったときにも課税対象になるケースが多く、 「売ったつもりがないのに利益が発生している」状態も頻繁に起こります。
この計算を手作業で行うのは、現実的ではないことがほとんどです。
理由③ 取得価額の計算方法(移動平均法・総平均法)も意識が必要
日本では、暗号資産の取得価額の計算に「移動平均法」と「総平均法」という2つの方式があります。
国税庁は、それぞれの方法に対応した「暗号資産の計算書」Excelファイルを無料で公開しており、 自分で手入力して計算することも可能です。
ただし、どちらにしても取引履歴をきちんとまとめる必要があり、 取引が多い人ほど専用ツールに任せた方が時間もミスも減らせるのが実情です。
無料ツールには大きく2種類ある
① 国税庁が提供する「暗号資産の計算書」Excel
日本の国税庁は、納税者が暗号資産の所得を計算しやすいように、 以下の2種類のExcelファイルを無料で公開しています。
- 暗号資産の計算書(移動平均法用)
- 暗号資産の計算書(総平均法用)
これらをダウンロードし、自分の取引履歴を入力していけば、 確定申告に必要な所得金額を算出することができます。
メリット
- 完全無料で使える
- 国税庁公式の様式なので安心感が高い
- 計算ロジックがシンプルで、仕組みの勉強にもなる
デメリット
- 取引所ごとのCSVを自分で整理・転記する必要がある
- DeFi・NFTなど複雑な取引は入力が大変
- 取引件数が多い人には現実的ではない場合もある
② 民間の損益計算ツール(無料プランあり)
近年は、暗号資産の損益計算に特化したクラウドサービスが多数登場しています。
多くのツールが「無料プラン」や「無料トライアル」を用意しており、 一定の取引件数までなら0円で試せるケースが増えてきました。
代表的なメリットは次の通りです。
- 取引所の履歴をアップロードするだけで自動集計してくれる
- 国内外の取引所・ウォレットに対応しているものが多い
- DeFiやNFT取引にも対応しているツールが増えている
- 日本の税制に合わせた形式でレポートを出力できる
「まずはツールの使い勝手を知りたい」「取引件数はまだ少なめ」という人は、 こうした無料プランから使い始めるのがおすすめです。
国税庁の「暗号資産の計算書」Excelの特徴と使いどころ
シンプルだが、基礎を理解するには最適
国税庁の計算書Excelは、機能としては非常にシンプルです。
銘柄ごとに「取得日・数量・取得価額」「売却日・数量・売却価額」などを入力していくことで、 自動的に所得金額が計算されるようになっています。
ツール任せではなく、 「そもそも暗号資産の利益はどうやって計算されるのか」を理解したい人にとっては、 一度このExcelで計算してみることは、とても良い学びになります。
こんな人に向いている
- 取引件数が少なく、1〜2つの取引所しか使っていない
- まずは税金の仕組みをしっかり理解したい
- 外部サービスに取引履歴をアップしたくない(ローカルで完結したい)
注意点:複雑な取引が多い人は、併用や乗り換えも検討を
DeFi・NFT・レンディング・海外取引所が絡んでくると、 Excelに手入力するだけでかなりの作業量になります。
その場合、「大まかな考え方の理解=国税庁Excel」「実務の計算=専用ツール」 と役割を分けて考えるのもおすすめです。
無料で試せる国内向け損益計算ツール
クリプタクト(cryptact)
「クリプタクト(cryptact)」は、日本の投資家に特に利用者が多い暗号資産損益計算ツールのひとつです。
国内外の多くの取引所に対応し、DeFiやNFTの取引にも順次対応を広げているのが特徴です。
2025年時点では、Freeプランでも次のような機能を利用できます。
- 国内外の取引所・ウォレットからの自動データ取り込み
- 年間取引件数10万件までの履歴を追加可能(ただし無料で損益が確認できる件数には制限あり)
- ポートフォリオ管理機能(保有資産や含み損益の確認)
本格的に確定申告用のレポートを出力する段階では有料プランが必要になる場合もありますが、 まず「自分の取引をまとめて見える化する」という目的なら、無料プランでも十分に試せます。
Gtax(ジータックス)
「Gtax」は、暗号資産の損益計算に特化したクラウドサービスで、 国内外の取引所・ウォレットに幅広く対応しているのが特徴です。
対応取引所は70以上とされており、現物取引だけでなく、 さまざまな取引パターンをまとめて計算できるよう設計されています。
公式サイトでは、「無料でかんたんに使える」と案内されており、 まずは無料利用でサービスを試し、その後必要に応じて有料プランを検討する流れになっています。
UI(画面の見やすさ)がシンプルで、初めて暗号資産の損益計算ツールを使う人でも 迷いにくいのが魅力です。
CryptoLinC(クリプトリンク)
「CryptoLinC(クリプトリンク)」は、個人投資家から法人まで幅広く利用されている損益計算ツールです。
国内外の取引所に加えて、DeFiやNFT・ステーキングなどにも対応しており、 「とにかくいろいろなサービスを触っている」という人に向いています。
個人向けには、比較的リーズナブルな有料プランが用意されているほか、 無料で試せる枠やキャンペーンが行われることもあります。
「コスパの良さ」と「多様な取引への対応力」を両立させたい人に候補となるツールです。
暗号会計RIKYU(RIKYU)
「暗号会計RIKYU」は、比較的新しい暗号資産損益計算ツールですが、 日本最大級のチェーン対応数をうたっている点が特徴です。
2025年末までの期間限定で、有料プランの「税務レポート機能」が無料開放されるキャンペーンが行われており、 個人でも損益計算結果を詳しく確認しやすい環境が整えられています。
マルチチェーンでDeFiやNFTを幅広く利用している人にとって、 「日本語対応で、国内税制を意識したツール」が増えてきたのは大きなメリットと言えるでしょう。
海外製の無料ツール(英語OKなら選択肢が広がる)
Koinly・CoinLedger・Kryptos など
世界的に利用されている暗号資産税務ツールとしては、次のようなサービスもあります。
- Koinly(コインリー)
- CoinLedger(コインレジャー)
- Kryptos などの海外製ツール
これらは基本的に英語UIですが、多くの取引所・チェーンに対応しており、 「グローバルにいろいろなチェーンを触っている」人にとっては選択肢になり得ます。
一方で、日本の税制に完全特化しているわけではないため、 最終的には自分で内容を確認したり、税理士に相談したりすることが前提になります。
無料の損益計算ツールを選ぶときのチェックポイント
① 自分が使っている取引所・ウォレットに対応しているか
まずいちばん大事なのは、「自分が使っている取引所・ウォレットに対応しているか」です。
国内主要取引所(bitFlyer、コインチェック、DMMビットコインなど)に加えて、 海外取引所やメタマスクなどのウォレットから、CSV/APIで取引履歴を取り込めるかを確認しましょう。
② DeFi・NFT・ステーキングにどこまで対応しているか
最近は、単純な現物売買だけでなく、次のような取引も一般的になっています。
- DEXでのスワップや流動性提供
- レンディング・ステーキング報酬
- NFTの売買・ゲーム内トークンのやり取り
これらにどこまで自動対応しているかはツールによって差があります。
自分の取引スタイルと照らし合わせて、「将来的に増えそうな取引」にも対応しているかをチェックしておくと安心です。
③ 無料プランの上限(取引件数・機能)
無料プランでは、次のような制限が設けられていることが一般的です。
- 年間取引件数の上限(例:50件までは損益表示OK、10万件まで取り込みだけ可能など)
- レポート出力は有料プランのみ
- メールサポートや詳細設定は有料プランのみ
「まずは試してみたい」「取引はまだ少ない」という段階では無料プランで十分ですが、 本格的な確定申告に使う場合は、有料プランが必要になることも多い点は頭に入れておきましょう。
④ 出力形式・日本の税制への対応状況
ツールによっては、国税庁の計算書Excelと相性の良い形式で出力できたり、 日本の税制(総平均法・移動平均法など)に合わせたレポートを出してくれたりします。
最終的に自分で確定申告書を作成する場合や、税理士に依頼する場合にも、 出力形式がわかりやすいツールを選ぶと、後の作業がスムーズになります。
⑤ サポート体制や情報発信
暗号資産の税制は、毎年少しずつ変化しています。
そのため、ヘルプ記事やブログ・FAQなどを通じて最新情報を発信しているツールは、長期的にも心強い存在です。
「使い方に迷ったときに、すぐ調べて解決できるか」という観点も、ツール選びの重要なポイントです。
無料の損益計算ツールを使うときの注意点
① 計算結果はあくまで「たたき台」だと考える
どれほど優れたツールでも、取引履歴のアップロード漏れや入力ミスがあれば、計算結果は正しくなりません。
ツールが出してくれた損益は、あくまで「たたき台」であり、 最終的には自分自身で確認する、あるいは税理士に相談することが大切です。
② 税制の変更やツール側の仕様変更にも注意する
暗号資産に関する税制は、国内外ともにアップデートが続いています。
ツール側もそれに合わせて仕様を変更することがあるため、 「去年と同じだから大丈夫」と決めつけず、 毎年サポートページやお知らせをチェックするようにしましょう。
③ プライバシー・セキュリティも意識する
損益計算ツールを利用するときは、取引所のAPIキーやCSVデータをアップロードすることになります。
利用規約やプライバシーポリシーを必ず確認し、 「どのようにデータが保存・利用されるのか」を把握したうえで利用することが重要です。
まとめ:無料ツールを上手に活用して、暗号資産の損益計算をラクにしよう
暗号資産の損益計算は、手作業で行おうとすると膨大な時間と労力がかかります。
一方で、国税庁のExcelや民間の損益計算ツールの無料プランを上手に活用すれば、 初心者でもだいぶハードルを下げることができます。
まずは次のステップで進めてみるのがおすすめです。
- 国税庁の「暗号資産の計算書」Excelで、計算の基本的な考え方をざっくり理解する
- 自分が使っている取引所・ウォレットに対応した損益計算ツールを探す
- 無料プランで取引履歴を取り込み、ポートフォリオや損益の全体像を確認する
- 必要に応じて有料プランや税理士への相談も検討する
「税金まわりが不安だから暗号資産を触るのがこわい…」という方こそ、
まずは無料ツールで「今、自分の損益がどうなっているか」を見える化してみてください。
状況が整理されるだけでも、今後の投資判断がぐっとしやすくなります。
なお、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、
具体的な税務判断については、必ず最新の法令や国税庁の情報を確認し、必要に応じて税理士などの専門家に相談してください。
